旧型機械も健在?RS-232CでのNCデータ入出力を解説

工作機械業界でもDXやIoTの導入が進んでいますが、20年以上前の旧型工作機械が今も現場で活躍している製造業も多く存在します。
新しい機械には、イーサネット(LAN)やUSBインターフェイスが搭載されているため、NCデータの入出力も、Windowsや制御装置の「コピー/貼り付け」機能で手軽に転送できます。
一方、USBメモリがない時代の旧型機は、「RS-232C」という規格のインターフェイスを使用しNCデータの転送をしていました。
本記事では以下にあてはまる方向けに、RS-232Cを用いたNCデータの入出力について説明します。
- RS-232Cインターフェイスがついた工作機械を使用している
- フロッピーディスクを使用してNCデータを入出力している
- NCデータ転送で困っていることがある
目次
RS-232Cとは?工作機械での役割と現状
RS-232Cとは、工作機械に搭載されるインターフェイス規格です。制御装置内のNCデータをパソコンに出力したり、CAD/CAMで作成したNCデータを制御装置に取り込む際に使用されます。また、NC制御装置の設定パラメータを外部機器にバックアップする用途でも使用できます。
2000年頃までは、NCデータの転送で多く使用されてきましたが、最新型の工作機械ではUSBメモリやイーサネットでのNCデータ転送が一般的となっており、標準仕様では搭載されておらずオプションになっている機械も多くなっています。

工作機械に搭載されるRS-232Cインターフェイス
RS-232Cによる4つのNCデータ転送方法
RS-232Cを使用して、NCデータを入出力する方法は主に4種類あります。それぞれ使用するタクテックス製品とメリット、デメリットを説明します。
1.USBメモリ対応のNCデータ入出力装置「P-530」を使う
USBメモリに対応したポータブル入出力装置を使用することで、機械にUSBインターフェイスがついていない場合もUSBメモリを使用してNCデータの入出力をすることができます。長いNCデータでも入出力ができ、パソコンにも容易にプログラムをバックアップできます。
メリット
- パソコンにNCデータをバックアップできる
- 油・ミストに強い頑丈な筐体
デメリット
- 複数の工作機械で1台の入出力機を使用する場合、ケーブルの抜き差しが多くなる
- USBメモリに保存するため、担当者やUSBメモリで保存データがバラバラになることが多く管理がしにくい
▼USBメモリを使用してNCデータを入出力できるポータブル端末
ポータブルUSB P-530
2.メモリ内蔵入出力装置「KOALA60」を使う
端末本体が記憶装置(メモリ)になっているNCデータ入出力装置を使用して入出力を行う方法です。NCデータが共通で使用できるような機械同士で入出力したい場合に便利です。
メリット
- 充電式で持ち運びが簡単
- コンパクトボディ
デメリット
- 液晶画面が小さく、端末でNCデータのプログラム内容が確認できない
- パソコンに転送する場合は転送ソフトが必要
▼メモリ内蔵 NCデータ入出力装置
ICメモリ KOALA60
3.パソコンと工作機械をRS-232Cケーブルで繋ぐ
パソコンと工作機械を直接RS-232Cケーブルで繋ぐ方法です。パソコンでNCデータを修正する場合に便利です。但し、最近のパソコンはシリアル(RS-232C)インターフェイスがなかったり、オプションであることが多いので注意が必要です。また、NCデータ転送ソフトをインストールする必要があります。
メリット
- パソコンの標準ソフトであるメモ帳やワードパッドでNCデータ編集ができる
- 直接パソコンのハードディスクに保存できるため、Windows上でNCデータ管理ができる
デメリット
- パソコンにシリアル(RS-232C)インターフェイスが必要
- 機械の近くにパソコンを設置するため、現場環境によってはパソコンの故障率が高まる
▼パソコンと工作機械を直接繋いでデータ転送するソフトウェア
WinVIEW V4
4.RS-232CをLAN環境で「TNET-Manager」運用し、新旧の機械を一元管理する
RS-232CをLAN環境に置き換えることで、イーサネット対応の新しい工作機械とRS-232C対応の機械を一元管理します。工作機械の制御装置側の操作だけでNCデータの入出力ができるリクエスト機能が使用でき、NCデータ転送に関わるムダな作業を可能な限り減らすことができます。
メリット
- すべての機械の通信状況、通信履歴が確認できる
- 機械側の操作だけでNCデータの入出力ができる
デメリット
- 機械1台につき、ハードウェアが1台必要になる
- LAN配線を伴う作業が発生する
▼RS-232C転送をネットワーク・デジタル化するDNCシステム
TNET-Manager
RS-232C接続の注意点と工作機械メーカーごとの違い
「うちの古い機械で、NCデータ入出力装置は使える?」
というご質問はよくいただきます。
結論からいうと、RS-232Cインターフェイスが機械に搭載されていれば、90%以上の機械では問題なく使用できます。
但し、以下の場合は確認が必要です。
- RS-232Cインターフェイスがオス/メス逆コネクタの場合
- RS-232Cインターフェイスが9個穴の場合
- 制御装置がOSP5000の場合
- RS-232Cインターフェイスのまわりが物理的に干渉する場合(KOALA60)
ポータブルUSB P-530のNC接続対応表はこちらをご確認ください
RS-232Cインターフェイスがオス/メス逆の場合
通常、機械側のRS-232Cインターフェイスは穴が25個あいているメスタイプが標準ですが、オークマ製旧型機械の一部では、RS-232Cインターフェイスのオス/メスが逆で25本のピンが立っている機械があります。標準付属のRS-232Cケーブルでは接続できない場合があります。

通常の機械側インターフェイス(メス)

オスメスが反対の機械側インターフェイス(オス)
RS-232Cインターフェイスが9個穴の場合
通常、機械側のRS-232Cインターフェイスは穴が25個あいているものが標準ですが、比較的新しい機械では穴が9個の機械があります。標準付属のRS-232Cケーブルは25ピンですので接続できないことがあります。

9ピンのRS-232Cコネクタ
制御装置がOSP5000またはOSP500の場合
昭和59年8月以前に製造されたオークマ製OSP5000/500シリーズを搭載した機械で、NC制御装置側に「DCコード制御」機能が搭載されていない場合に通信できない場合があります。オプション「OSP5000専用」キットを使用することで通信できる場合があります。詳細はタクテックスまでお問い合わせください。
RS-232Cインターフェイスのまわりが物理的に干渉する場合(KOALA60)
KOALA60を使ってNCデータ転送を行う際は、KOALA60本体と機械側のRS-232Cインターフェイスまわりの干渉確認が必要です。KOALA60はケーブルを使用せずに直接RS-232Cインターフェイスに差し込みます。機械によっては、インターフェイスまわりのフタと干渉したり、KOALA60本体が干渉することがあります。RS-232CケーブルでKOALA60を繋ぐことで解決できます。
フロッピーディスク運用のリスクと移行のすすめ
現在、フロッピーディスクを使用してNCデータの入出力を行っている機械がある場合、フロッピーディスクからUSBメモリへの移行をおすすめします。
かつて、フロッピーディスク対応のNCデータ入出力装置は工作機械メーカーやNC転送装置メーカーから販売されており、多くの工作機械はフロッピーを使用してNCデータ転送を行っていました。
コンパクトフラッシュやUSBなど他の保存デバイスの台頭に伴い、フロッピーディスクとフロッピーを読み取るためのフロッピーディスクドライブの生産が終了し、工作機械メーカーやNC転送装置メーカーから販売されていたフロッピーディスク対応のNCデータ入出力装置も販売終了となっています。(タクテックスでも「ポータブルフロッピー M-220」というフロッピー対応入出力装置の販売、修理は終了しております。)
フロッピーディスクを使い続けることのデメリットは以下の通りです。
フロッピーディスク自体がなくなっていく
先述した通り、フロッピーディスクは生産終了しており、新しいフロッピーを入手することはできません。どの企業も持っているフロッピーを使いまわして使用していますがいずれは無くなり、入手困難な状況になります。
フロッピーディスク対応 NCデータ入出力装置の故障
フロッピーディスクを読み取る装置であるフロッピーディスクドライブも生産が終了しています。各メーカー、フロッピー転送装置の販売、修理は終了しており、故障が発生しても修理することができません。
メーカー | 製品名 |
三菱電機 | FD-3.5Ⅱ |
森精機 | F-15R / F-200D |
FANUC | Handy File |
MAZAK | MICRO DISK SYSTEM |
タクテックス | F-1 / F-2 / F-0 / M-1008 / K-203 / M- |
フロッピーディスクに書き込まれているプログラムが取り出せなくなる
フロッピーディスクの読み込みができるパソコン、外付けフロッピーディスクドライブも少なくなっています。NCプログラムをフロッピーのみで管理している場合、資産であるNCプログラムをフロッピーから取り出す方法がなくなります。
フロッピー内のNCプログラムを取り出せなくなった場合、新たに手打ちでNCプログラムを作成する必要がでてくるため、労力と時間が掛かります。また、古い時代に加工したプログラムであることが多いため、当時の担当者がいないことも多いです。
RS-232C機器・NCデータ転送でお困りならご相談ください
RS-232Cを使ったNCデータ転送は、今も現場で重要な手段です。
機械の種類や運用状況に合わせた最適な接続方法・運用改善をご提案できます。
お困りの際は、ぜひタクテックスまでご相談ください。