タッチプローブ、原点出しで終わらせない|CAD/CAMで実現する機上測定と自動化

「うちの工作機械にもタッチプローブは付いているけど、芯出しにしか使っていない」
——そんな声を、製造現場でよく耳にします。
実はそのタッチプローブ、CAD/CAMと組み合わせることで、多くの作業を自動化できる力を秘めています。ワーク原点設定はもちろん、加工したワークを機械から取り外すことなくその場で測定する「機上測定」まで。これまで人が機械を止め、扉を開けてノギスやマイクロメーターで行っていた計測作業を、タッチプローブに任せられるようになるのです。
本記事では、CAD/CAMとタッチプローブを組み合わせることで何が変わるのか、SolidCAM導入前・導入後の作業フローの違いを交えながら、わかりやすく解説します。人手不足や省人化に課題を感じている工作機械現場の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
タッチプローブとは?

タッチプローブとは、工作機械の主軸などに取り付け、ワークや治具に接触させることで位置や寸法を計測できる装置です。接触した瞬間の信号をNC制御装置が読み取り、座標値としてNC制御装置に入力できるのが特徴です。
多くの工作機械メーカーがこのタッチプローブをラインナップしていますが、標準装備ではなくオプション装備であることが一般的です。すでに設備されている機械も多い一方で、古い機械など搭載していない機械があるのも実情です。お使いの機械に搭載されていない場合でも、後付けで対応できるケースもありますので、この記事を通じて「CAD/CAMと組み合わせるとこんなことができるのか」というイメージを持っていただければと思います。
なお、CAD/CAMそのものについて詳しく知りたい方は、CAD/CAMとは?知っておくべき基礎知識と選び方 の記事もあわせてご覧ください。
タッチプローブが「原点出し専用」になっている現場の課題
機械にタッチプローブを搭載していても、実際の活用範囲は限定的というケースは少なくありません。
人によるパルスハンドル操作が必要になることが多い
工作機械メーカーによっては、タッチプローブを制御するための「原点計測マクロ」があらかじめ用意されている場合があります。これを使えばワーク座標系の設定はある程度自動化できますが、多くの場合、タッチプローブを計測位置の近くまで移動させる作業は、MDIモードやパルスハンドルによる人の手作業が必要になります。機種やNC制御装置、オプション構成によって仕様はさまざまですが、「タッチプローブはあるのに、結局は人が操作している」という現場は珍しくありません。
マニュアル計測は時間、手間がかかってしまう
精度の高い加工や安定した品質を保つには、丁寧で正確な計測作業が欠かせません。そのため、加工の中間計測や加工後の寸法確認では、機械を一旦停止し、扉を開けてノギスやマイクロメーターといった計測機器で人が手作業により計測するという工程が、今も多くの現場で行われています。一方で、こうした手作業による計測にはそれなりの時間と手間がかかり、その間は機械が停止した状態になります。

作業者ごとの経験差による計測結果のばらつき
手作業での計測は、担当者の経験や力加減、計測箇所の判断によって結果にばらつきが生じやすいという課題もあります。特定の熟練者に計測を頼らざるを得ない現場も多く、その方が不在の際には作業が滞ってしまうこともあります。

大型ワーク・複雑形状での計測作業の負担
ワークサイズが大きい場合や形状が複雑な場合、人の手による計測はさらに負担が大きくなります。計測箇所が多岐にわたるほど、時間もかかり、ミスのリスクも高まります。
CAD/CAMとの連携で「人を介さない」機械加工を実現
こうした課題に対して、CAD/CAMとタッチプローブを連携させることで、芯出しと測定作業をデジタル技術に置き換えることができます。ここでは、SolidCAMのオプションである「SolidProbe」を例に、具体的にどのようなことができるのかをご紹介します。
ワーク原点の芯出し(原点出し)自動化
SolidProbeでは、CAD/CAM画面上で計測したい位置をピンポイントで指定し、芯出し(原点出し)用の計測プログラムを作成できます。SolidCAMで作成したNCプログラムを読み込ませ、サイクルスタートと同時にタッチプローブがワーク原点設定を行います。
ワークを外さず測る「機上測定」でノンストップ計測
加工したワークを機械から取り外すことなく、その場で寸法を計測できるのが「機上測定」です。従来、機械を止めて扉を開け、人がノギスやマイクロメーターで行っていた計測作業を、タッチプローブが代わりに行います。ワークの脱着や再度の位置合わせが不要になるため、計測にかかる手間と時間を削減できます。
計測結果と寸法のねらい値を判断し、NC制御装置内の工具径補正の数値を自動で書き換えることも可能です。
CAMシミュレーションによる干渉チェックで安全に動作確認
計測プログラムも切削プログラムと同様に、CAM上のシミュレーションで動作を事前に確認できます。ワークや治具との干渉がないかをPC上でチェックできるため、実機で慎重に空運転を行う手間を減らし、安全に計測動作を組み込むことができます。

機上測定のマシンシミュレーション
サイクルスタート1つで切削〜計測までを一気通貫で実行
芯出し、切削加工、機上測定を別々の工程として分ける必要はありません。CAM上で一連のプログラムとして作成しておけば、サイクルスタートボタンを押すだけで、原点設定から切削、計測までをノンストップで実行できます。従来のように「削る→機械を止めて開ける→測る→補正値を算出・入力する→削る」という工程を、都度人の手を介さずに進められるようになります。

検査成績表をExcelで出力
計測結果はExcel形式の検査成績表として出力することも可能です。計測後の帳票作成にかかっていた手間を省き、記録の管理や品質保証への活用もしやすくなります。

(例)SolidProbeを使用した成績検査票
CAD/CAMでタッチプローブを活用して実現する「さらなる付加価値」
タッチプローブとCAD/CAMの連携は、計測作業そのものの効率化だけでなく、現場全体にとってのメリットにもつながります。
熟練者の経験に頼らない安定した計測品質
計測作業をプログラム化することで、担当者の経験や力加減による結果のばらつきを抑えやすくなります。特定の熟練者に計測作業が集中してしまう状況の緩和にもつながります。
省人化・自動化で人手不足の解消に貢献
「機械を止めて扉を開け、人が計測する」という工程そのものが減ることで、少ない人数でも工作機械を稼働させやすくなります。人手不足に悩む現場にとって、既存のタッチプローブという設備投資を最大限に活かしながら省人化・自動化を進められる点は、大きな意味を持ちます。
導入前・導入後の比較
※機種・NC装置・オプション構成によって、実際の運用は異なる場合があります。
まとめ:CAD/CAMでタッチプローブ性能を活かせる
タッチプローブは、多くの工作機械に搭載されているオプション装備でありながら、原点出しのためだけに使われ、本来の力を十分に発揮できていないケースが少なくありません。
CAD/CAMと連携させることで、芯出しから機上測定、干渉チェック、検査成績表の出力までを一連の流れとして自動化しやすくなります。機械を止めて扉を開け、人が計測するという工程を減らせることは、人手不足に悩む現場にとって省人化・自動化を進める大きな一歩になります。
なお、本記事でご紹介したSolidProbeは、CAD/CAMソフト「SolidCAM」のオプション機能です。SolidCAM本体の機能に加えて、タッチプローブをお持ちの環境で活用いただけます。お使いの機械やタッチプローブとの組み合わせについてはメーカー、機種ごとに条件が異なりますので、現状の設備を活かしながらどこまで自動化できるか気になる方は、タクテックスまでお気軽にご相談ください。
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